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私とアイツは、それこそ生まれたときからの腐れ縁ってやつで。
物心つく前から一緒にいたから、オモテの顔もウラの顔も互いに知り尽くしている関係で。
それなのに、アイツが今、真剣な顔に怒りをにじませながら、私を見つめる理由がまったくもってわからない。理解できない。
「あの男のこと、好きなの?」
飛んでいた思考が、ハッと現実に戻る。
ここは、お昼休みの渡り廊下。
目の前に佇む小柄な彼の背後には、秋の薄い雲が青空に張りついているみたいに広がっていて。
肌にまとわりつく風の冷たさのせいか、無言の威圧という名の攻撃に怯えてしまったせいか、行き交う生徒達の視線が全身にビシバシと突き刺さるせいか。
身体だけでなく心臓までも、キュッと萎縮してしまう。
私は、むっつりとした不機嫌顔で尋問してくる絶世の美少年を見下ろした。
私、桂木春香(カツラギ ハルカ)と同い年の幼馴染、間宮純(マミヤ ジュン)。
不機嫌さを隠しもしない彼の表情は、到底私と同じ16歳とは思えないほどの可憐な容姿に、相反する小悪魔を潜ませていて。
私は恐怖に駆られてジリジリと後ずさる。
「ねえ、聞いてるの? ハル」
純のふわふわとした薄茶の髪が額にかかり、同じ色をした大きな瞳に影を作る。
むっとつぐんだ唇には、少年とは言い難いほどの色気が漂い、私はビクつきながらも思わず目を奪われてしまう。
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