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「……あの男って、もしかして須藤くんのこと?」
「他に誰がいるってのさ」
気まぐれな猫みたいに色を変える、目尻が少しだけ吊り上がったアーモンド型の大きな瞳に冷嘲が浮かぶ。
純のイライラがピークに達しそうな予感に、私の中で危険信号が点滅し出す。
「す、須藤くんとはそんなんじゃないよ。純も知ってるでしょ? 今度の文化祭実行委員会で一緒になっただけで」
「うるさいよ。だからって何? 休み時間も一緒、お昼も、帰りも一緒って、ありえなくない? ボクのことバカにしてんの?」
ちょっとまって、何それ。
聞き捨てならないんですけど。
まるで浮気を問い詰めている彼氏のような、そのセリフ。
私はあなたとカレカノになったつもりはありません。
ええ、それはもう、まったくもってありえません。
絶句する私に、純は爆弾を投下した。
「目障り。うっとうしい。腹立つ。許せない。ハル、勘違いしないでね。ハルは女子にモテても、男には絶対モテない性別不明なオトコオンナなんだから」
――――なぬっ!
繊細な乙女心を一瞬でぶっ壊す非道なセリフに言葉が出ない。
だけれども。
……ええ、ええ、認めますよ。
おっしゃるとおりでございます。
私は世の乙女とは程遠い、純よりも15センチも背の高い176センチもの長身で。
髪も男子のように短髪にしてて、柔道だって黒帯だし、その上無口な人見知り。
いまだかつて、女の子にモテても男の子にモテたことなど、生まれてこのかた一度たりともございません。
でも、そんな風にいわれたら私だって傷つくんだよバッキャロー。
「……だからってそんなふうに言わないでよ。私だっていつかは彼氏とか欲しいし、好きな人くらいいたっていいじゃない」
それは、純の言うように須藤くんではないけれど。
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