キチクなアイツ

24/33
721人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
◆◇◆◇◆◇◆◇  翌朝、学校に行きたくない私を半ば追い立てるように叩き出した妹に、恨みがましい気持ちを抱きながらも、仕方なく玄関扉を開け放つ。 「お・は・よ、ハール」  飛び込んできた満面の笑顔に、私は静かに扉を閉めた。 「ちょっと! ハル、ひどくない!? なんで閉めるかな! せっかく明るく楽しい拷問思いついたのに! 聞きたくないの!?」  聞きたいわけがないだろう。  むしろ頭大丈夫か、コイツ。  明るく楽しい拷問ってなに。  なにその奇天烈な発想。  ありえない、ありえないから本当に。  扉をこじ開けようとする純を阻止すべく、引っ張る手に力がこもる。 「開けやがれこのブスッ! あ、兄さん! 聞いてよ、ハルがヒドイんだよーっ」 「え!? 智兄も一緒なの!?」   『兄さん』の呼び声に思わず力が緩んでしまい、グイッと扉ごと身体が引っ張られる。  バタンと開け放たれた扉から伸びる華奢な手に、腕を掴まれてしまう。 「ふふ、捕獲」  ああ、女子も羨む純の麗しいこめかみに、くっきりとしたタコマークが浮かんで見える…………。 「バカだねえ、何度同じ手に引っかかるの」 「……純のうそつき。誰もいないじゃない!」 「ほんとムカつくよね。ハルってばボクを怒らせる天才なんじゃない? ……ああ、イライラする」
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!