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◆◇◆◇◆◇◆◇
翌朝、学校に行きたくない私を半ば追い立てるように叩き出した妹に、恨みがましい気持ちを抱きながらも、仕方なく玄関扉を開け放つ。
「お・は・よ、ハール」
飛び込んできた満面の笑顔に、私は静かに扉を閉めた。
「ちょっと! ハル、ひどくない!? なんで閉めるかな! せっかく明るく楽しい拷問思いついたのに! 聞きたくないの!?」
聞きたいわけがないだろう。
むしろ頭大丈夫か、コイツ。
明るく楽しい拷問ってなに。
なにその奇天烈な発想。
ありえない、ありえないから本当に。
扉をこじ開けようとする純を阻止すべく、引っ張る手に力がこもる。
「開けやがれこのブスッ! あ、兄さん! 聞いてよ、ハルがヒドイんだよーっ」
「え!? 智兄も一緒なの!?」
『兄さん』の呼び声に思わず力が緩んでしまい、グイッと扉ごと身体が引っ張られる。
バタンと開け放たれた扉から伸びる華奢な手に、腕を掴まれてしまう。
「ふふ、捕獲」
ああ、女子も羨む純の麗しいこめかみに、くっきりとしたタコマークが浮かんで見える…………。
「バカだねえ、何度同じ手に引っかかるの」
「……純のうそつき。誰もいないじゃない!」
「ほんとムカつくよね。ハルってばボクを怒らせる天才なんじゃない? ……ああ、イライラする」
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