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ぷっくりとした肉厚の唇は笑みを刻んでいるけれど、その瞳は大量虐殺しそうなほどの殺気が滲んで見えるのは、私の気のせいだと思いたい。
「ほら、行くよ、奴隷」
「奴隷じゃないし。私に触らないで」
掴まれた腕を振り払おうとするけれど、それを許してくれるほどヤツは甘くなくて。
私なんてお構いなしに、ずんずん進む足をピタッと止めて、クルリと振り向くと、
「ボクに逆らうの? 生意気。逆らった罰だよ。ここでキスしな」
純は、理解不能な言葉を放った。
「はあ?」
「ボクに、今ここで、キスしろって言ってんの。一回で理解しろよブス」
あほですか。
こんな往来で、朝っぱらからキスとか、何バカップル的発想してやがるんですかアナタ。
理解できない。
頭のネジがすぽーんと抜けたとしか思えない。
「寝言は寝て言え」
美少女な顔した変質者に、私は可哀想な目を向けてバッサリ切り捨てる。
「うわ、憎たらしいなその顔。ねえ、そう思うでしょ、兄さん」
「え? 智兄いるの?」
純の視線を追って振り向こうとした、刹那。
両腕を思い切り引っ張られ体制を崩し、あっと声を上げた時には、目の前に美麗な顔が迫っていて。
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