キチクなアイツ

27/33
721人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「びっくりしたよ、ハルちゃん」  一時間目終了後、私の周りに集まってきたクラスメイト達に、私は頭を抱えた。 「だって、隣のクラスの間宮くんにおんぶされて登校してくるんだもん」  みんな口々に、どういうこと? と繰り返す。 「ああ、もうほんと、どういうことなのかな……」  魂の抜けた顔で、ふふふと力なく笑う私。  でも、現実逃避した私のぬるい発言では、みんなの好奇心は満たされない。  どうやら私は、純にキス? されたショックで気を失ってしまったらしく、そんな私を、純は、無情にもおんぶして学校まで連れてきたらしいのだ。  校門の近くで私は目を覚ました。  注目を集めまくっていたその状況を認識できるまで、私は純におんぶされたまま、校門横にひっそり佇む二宮金次郎像のごとく固まっていた。  かたや純はと言えば、何故かご満悦な顔でみんなに挨拶しまくっていたのだが。 「――――っ!!」  心の内で断末魔の叫びをあげた私は、純の背中から転げるように飛び降りて、一目散に教室へ駆け込んだんだけれど。  すでになかったことにはできない状況に、私は悄然と肩を落とすしかなくて。  好奇心むき出しの野獣たちを前に、もはやお手上げ状態な私だった。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!