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「……ふうん、カレシ欲しいんだ。でも無理だし。鏡見てみな? 彼氏なんて絶対無理って分かるから。……ねえ、白状しちゃいなよ。須藤のこと、そういう意味で好きになってんじゃないの?」
「鏡って……ヒドいな! 言われなくても自分が可愛くないの知ってるし! それに、そういう意味で好きとか違う。そりゃいい人だと思うよ。優しいし、私を女の子扱いしてくれる数少ない男子だし。でも、好きとか考えたことないんだよ」
「本当かなあ?……でも、その言葉、信じるからね? 嘘ついたらぶっ殺す」
ぞっとするほど妖艶な笑みに乗せた、まさかの殺人予告。
緊迫した空気に、私はごくりと唾を飲み込んだ。
「でも、好きな人はいるんだよね?」
すう、と純の瞳が冷たく光る。
「ねえ、だれ?」
「え、いないよ? 私、今まで男の人好きになったことない」
言えない、ほんとのことなんて。
ましてや純には絶対。だから、私は平気な顔して嘘をつく。
「そっか。そうだよね、ハルってボクとは違ってモテないし。須藤なんて男前、高望み過ぎてシャレになんない。身の程知らずもいいところ」
私の答えに、ぱあっと花が咲くように、甘く蕩けるように、純は笑った。
ああ、この笑顔に男共は心奪われるんだ。
……同じ男とわかっていても。
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