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「忘れないで。ハルは京ちゃんと違ってブスなんだから。ボクの目を盗んで彼氏作ろうなんて思うんじゃないよ」
私の腕を掴み、ちょっと背伸びして視線を合わせ、唇を歪ませ黒く笑う純。
言いたい放題で腹が立つ。けれども、それは真実だから、何も言い返せない。
私は悲しくなって、同じ目線になった涼やかな純の瞳を見つめ返すことしかできなくなる。
でも。
「ブスでも、妹の京ちゃんみたく可愛くなくても、男子より力強くっても、しょっちゅう性別間違われても……そんな私がいいって男の子、いつか現れるもの」
眉根を寄せて、思わず夢みたいなことを語ってしまう。
すると純は、面白いものを見つけた子供のような顔をして、くくっと低く喉を鳴らした。
「そう。ハルってばボクに反抗するんだ。……生意気。ハルは今までどおりボクのいうことだけ聞いてたらいいんだ。でも、ハルなんてブサイク女、だあれも相手にしてくれないだろうから」
可愛い唇から飛び出す暴言の数々に、怒りを通り越して恐怖を感じる。
そんな小心者の私に、綺麗な顔をグッと寄せた純は、お互いの唇が触れそうな距離で、うっとりと囁いた。
「そのときは、仕方がないね」
あまりの近さに、近づいた距離だけ後ろに頭を引いてしまう。
掴まれた腕が痛い。
強い力。
その女顔からは想像もできないような、男の力。
「ボクがハルをもらってあげる。それまで男なんて近づけちゃ、ダメ」
この時、条件反射のようにして思ったこと。
それは。
絶対イヤだ。
こんないじめっ子、本当にごめんなさい。
世の男共をいっぱつで虜にする満面の笑みで言われても、私はごまかされない。
イヤなものはイヤ。
蒼白になった顔で無言のままブンブン頭を振る私に、純はクスクス笑いながら、
「ハルはずっと、ボクの奴隷。大人しく言うこと聞かないと、昔みたいにイジメ倒してやる」
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