悪魔なアイツに捕らわれて

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 耳の端で午後の授業開始のチャイムが遠く響く。  でも、純の小悪魔的な眼差しから目が離せなくて。  掴まれた腕に、さらに力がこもった。 「いった……!」 「わかったね、ハル」  腕が悲鳴を上げている。  振り払うことができないほどの、まるで強い意志が表れたかのようなその力に、執着に、すっと血の気が引いてゆく。 「わ、かったから、もう、やめてっ」  涙と怯えの滲んだ瞳で、キッと睨む。  すると、純の腕の力がふっと緩んだ。 「いい子」  瞬間、ちゅ、と軽やかに音を立てて触れた柔らかな感触に、今度こそ純の腕を振り払うことができた。  ちらほらと教室に戻る生徒達のキャーと言う悲鳴、いや歓声? が耳の奥で木霊する。  ほ、ほ、ほっぺにちゅう、された!   しかも見られた!   見られてしまった! 「し、し、信じられないっ!」 「ハル、顔、真っ赤。トマトみたい」  ブサカワ。  そういい残し、教室に戻るべく上機嫌に駆け出した純の後姿を、私は硬直したまま――――彼の姿が小さくなるまで、呆然と見送ることしかできなかった。
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