旅の終わりは新たな旅の始まり

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竿がしなり、ラインを持っていかれる。 先ほどのカツオとは引きが全く違う。 「シイラかカジキでもかかったか?!」 竿のしなりが興奮と緊張を船内にもたらす。 「ぐおっ!? なんつう引きだ!」 竿が大きくしなり、ラインが次々と海に飲み込まれていく。 船をも動かしそうなその引きをなんとか静めようと爪牙が竿を立てる。 しかし、針にかかった魚は疲れを知らぬのか止まる気配がない。 このままではリールに巻かれたラインが全て出てしまう。 そうなればラインが切れてしまうのも必然だ。 「こんな激しい引きは初めてだ……!」 だが、釣りというのはこういう状況が燃え、興奮するのだ。 「爪牙、切られるなよ!」 「当たり前だ! 任せとけ!」 張り切る爪牙だが、現状は変わらずラインがどんどん海へと沈んでいく。 もうすでにラインの二百メートルは海の中だ。 「ぐおっ!? なんだ?! いきなり方向が変わりやがった?!」 まるで何かから逃げるかのように、かかった魚は大きく右に動いた。 それと同時に速度が増す。 リールに残されたライン、約三百メートル。 ギュルギュルとリールから大量のラインが出ていく。 ドラグをきつく締めればラインが切れるし、このままラインが全て出ていくのを待っていても最終的には切れるだろう。 今爪牙に出来ることといえば、かかった獲物がラインを全て出し切る前に疲れることを願うだけだ。 だが、そこにさらに問題が発生する。 「爪牙! 渦潮だっ! 離れるぞ!」 「なっ!? なんでこの海で渦潮なんか発生するんだよ!」 渦潮の発生。 ここはグアム沖、こんな所で渦潮など発生するはずがない。 渦潮とは、海流の方向、速さが異なる境や潮位差の大きな場所で発生する。 一方向に流れるグアム沖の海流では発生するはずもないのだ。 だが現にいま、船の前方で直径五十メートルにもなりそうな巨大な渦潮が発生している。 辺りを見渡せば渦潮が一つではないことも確認できる。 一つは爪牙の乗っている船の前方、一つは船の後部のラインの先約三百メートルの位置、一つは船の左側約三百メートルの位置。 計三つの渦潮は、渦潮同士を線で結べば綺麗な正三角形が出来そうな等間隔で離れている。
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