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「こちらを狙ってるヘリはどうなってる?」
テルはシダの下ばえを折りとると、砂色のマウンテンパーカのあちこちに挿(さ)していく。顔には湿った土を塗りたくった。
「カモフラージュだ。ないよりは増しというくらいだがな」
緑の陰からゆっくりと匍匐(ほふく)前進で進み、日の当たる場所に顔だけ覗(のぞ)かせた。軍の小型双眼鏡は日乃元の先進の光学技術を応用し、12倍の倍率と夜でも偵察(ていさつ)可能な暗視性能を誇る。
「まずい」
「なにがだ?」
ジョージが低く質問する。タツオも顔に土をなすりつけた。テルの横に這(は)っていく。
「あいつを見ろ」
仰向(あおむ)けになって、抜けるように澄(す)んだ夏の青空を見上げた。禍々(まがまが)しいローターを回転させ、軍用のヘリコプターがふわりと静止している。ジョージも白面を土で汚してやってきた。三人でヘリコプターを観察する。ジョージがいった。
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