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清水サイド
彼女は廊下を走っていた。その目は恐怖の色に染まっている。
しかし、それも仕方のないことである。
つい先程、目の前で人が死ぬのを目撃したのだから。遂に耐えきれなくなり、清水は走るのをやめ、その場に膝をつき泣き始めた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
清水が顔を上げると、そこにはミカが立っていた。
「ミカ…ちゃん。」
清水は泣きながらミカへと抱き付いた。
安堵、悲哀、様々な感情が混ざり涙となって流れ出る。
ミカも清水を抱き締め、その頭を優しく撫でた。
そのミカの表情に慈愛の感情など無いことなど、清水は知るよしも無かった。
新也サイド
理科室に着いた私は入ると同時にあまりの腐臭に顔をしかめた。
理科室の棚には生物の臓器が瓶に詰められ、液体の様なものに浸かっている。恐らく保存液なのだろうが、腐っているのか色が変色しているのが見受けられた。
「ん?これは?」
瓶との間に一枚の紙切れがあるのを見つけた。
その紙切れには
「ミカを信じるな」
と書かれていた。
「なんだ、これは?」
ミカというのはあの少女のことなのだろうか。
私は沸き上がる彼女への不信感を抱きつつも、理科室を後にした。
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