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何も言えないままの私を、優しく見つめる君の視線が……私の胸を、さらにときめかせた。
「……あの……えっと……何で……ここに……。」
君が……ここにいるはずなんて、ないと思ってた……。
だって……8年前に結婚した私は、地元の大阪から旦那の実家のある東京に引越してきたから……。
君が……東京にいるなんて思わなかったんだ…… 。
「今、大阪の広告会社で働いとるんやけど……東京の本社に企画を持ち込む為に、昨日の夜に、東京来てん……。
まぁ……簡単に言えば、出張や。
紗希は、何で、東京におるんや?」
「そうなんだ……。
私は……8年前に結婚して、旦那さんの実家のある東京に引越してきたの……。」
私は、そう言って、苦笑いした。
私の話を聞いて、君は、一瞬、顔を曇らせた。
「……紗希、結婚しとるんや……。」
君は、少し、寂しそうな声で言った。
「……うん。
……滝山君は……結婚してるの……?」
肩を叩かれて振り向いた時、すでに気づいていた左手薬指の指輪……。
分かっていたけど……なんとなく……「結婚してない……。」って言ってほしい……なんて、ちょっとだけ期待を込めて聞いてみた。
しかも……付き合ってた頃は、下の名前で呼んでたのに……何だか……呼んじゃいけない気がして……苗字で呼んでしまった。
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