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「今日はこれで上がりなんで。帰る方向を知ってるのは何度か見かけたことあるからです」
彼はそう言ってから、ストーカーじゃないっすと慌てて付け加えた。それがおかしくて私が笑うと、彼もまた照れたように笑った。
「俺、高城晃(たかぎあきら)って言います」
「私は藤田さやか」
──彼から週3回ガソリンスタンドでバイトしていて、火曜日はいつもこの時間に終わると聞いてから私たちは毎週火曜日に帰り道の分岐点まで一緒に帰るようになった。
歩きの彼に合わせて、私も自転車を押してゆっくりと歩く。
すっかり春をまとった風は心地よく、いつしかトレンチコートもいらない気温になり、週間予報で火曜日の天気を確認するという新しい習慣は、私を一喜一憂させた。
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