44人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
『送って行きましょうか?パジャマでは流石に危険ですよ、お嬢さん』
白い手袋を履いた右手を差し出された。
『ドラキュラさん……ですか?』
今は亡きお父さんから小さい頃に聞かされてた『忌み嫌う者』のイメージとは違い、随分体格は良かったけど。
『確かに。先代まではそう呼ばれる事もありましたが。
私も吸血鬼ですが、血を飲むと煩わしい副作用とでも言いましょうか、それもありますので』
深々と頭を下げた。
顔だけを軽く上げて、話を進める。
『吸血鬼と言っても、不自由はしてませんし。
血を飲むのは約30年に一度程度で間に合います。なので後10年と少しは何も無いでしょうね』
そうなんだ、でも吸血鬼なんだ。
けど、なんだか信用出来るような気がして、その右手に掴まる。
立ち上がろうとした時、左のくるぶしに痛みを感じ、よろめいてしまった。
『おっと、大丈夫……では無いでしょう。挫いてるみたいですね。』
と、彼はアタシを抱き抱えてくれたその時
アタシが逃げて来た、山の上から橙色の光がいくつも走り降りて来るのが見えた
『イヤ!捕まりたくない!』
無意識の内に、彼の胸に顔を埋めて叫ぶ。
アタシは背中に力を感じた。
『アソコ……病院から?理由は後で聞きましょう』
アタシを抱き上げると、彼は空を飛んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!