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「俺、イルカが好きなんだ。」
夕焼けに照らされながら、クラブTシャツの柄を見せてくれた、そんな先輩。
先輩の背中には、水色のイルカが黒いTシャツの上を泳いでいた。
そんなことで…先輩を見ていたくて…それだけで入部を決めたことは、誰にも話したことはまだない。
その綺麗な声で名前を呼ばれるのが、すごく好きだった。
隣に並びたいとか、見つめて欲しいとか、特別な人になりたいとか。
そんなことは、もう願わないから。
神様、お願い。
もっと、後輩でいたいの。
夏休みが終わってしまったら、もう…。
もう、繋がりがなくなってしまう。
そんな、すぐなくなるような繋がりなの。
学校ですれ違っても、視線を絡めあうそんな関係じゃないの。
遠い存在。
近いようで、遠い。
こんな、私の初恋。
実ることはない、悲しい恋。
愛されることのない、愛おしい人の背中を眺めながら、プールサイドを歩くのもあと少し。
大好きだよ、先輩。
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