第1章

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「俺、イルカが好きなんだ。」 夕焼けに照らされながら、クラブTシャツの柄を見せてくれた、そんな先輩。 先輩の背中には、水色のイルカが黒いTシャツの上を泳いでいた。 そんなことで…先輩を見ていたくて…それだけで入部を決めたことは、誰にも話したことはまだない。 その綺麗な声で名前を呼ばれるのが、すごく好きだった。 隣に並びたいとか、見つめて欲しいとか、特別な人になりたいとか。 そんなことは、もう願わないから。 神様、お願い。 もっと、後輩でいたいの。 夏休みが終わってしまったら、もう…。 もう、繋がりがなくなってしまう。 そんな、すぐなくなるような繋がりなの。 学校ですれ違っても、視線を絡めあうそんな関係じゃないの。 遠い存在。 近いようで、遠い。 こんな、私の初恋。 実ることはない、悲しい恋。 愛されることのない、愛おしい人の背中を眺めながら、プールサイドを歩くのもあと少し。 大好きだよ、先輩。
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