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 聖杯戦争  それは冬木という都市にて行われた「聖杯」を争い奪い合う魔術師同士の殺し合いだった。  その「聖杯」を求める魔術師は、その聖杯の力により呼び出された伝説の英霊たち、七騎のサーヴァントと契約し、覇権を争う。  その英霊たちを呼び出せてしまうほどの奇跡を実現したる「聖杯」は、必ずやいかなる願いも叶えることができるであろう。  だが、これよりこの地で行われる聖杯戦争は聖杯戦争であり、聖杯戦争ではない。  もし彼の英雄王以上の存在、神霊自体が召喚されたなら……  それはハイ・サーヴァントと呼ばれる存在。  そんなことは人類の理解を超え、それに特化した「ムーンセル」でしか実現できない。  もしそれが地上でできるのであれば、その者には聖杯はいらないだろう。  神霊を呼び寄せることは極端にいえば、聖杯戦争の大本であるイエスを召喚できるのと同じこと。そうすれば聖杯戦争そのものが意味をなくしてしまう。  だがそれがわかっていてもワタシはその知識を、欲求を彼に与えてみた。  どうなるのか知りたかったのだ。  すると彼は予想通りに、いやそれ以上に動き始めた。  もはや彼には聖杯戦争の根底など、根源への到達などはどうでもいいようだ。  ただその実現のために目的ではなく、手段として用いただけである。  これほど予測通りになるのは、あまりにもつまらない。  だが、彼の行動によってとても興味深い事柄も生まれつつあった。  これから起こるこの聖杯戦争は、先の英雄王に言わせれば最高の「愉悦」であろうか。いやそれはワタシにとってであり、彼から言わせれば人にとっての『悪』なのか?  しかしながらその行く末を知る者は、この戦いの本当の勝者であることはまちがいがない。
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