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これから、息子には、試練とも呼べる儀式を行わねばならない。
父親として、それが正しい決断だとは思わない。ただ、魔国の王として、当然だと思うだけだ。
カツ…
豪奢な絨毯から、一歩踏み出し、王たる男は自らが座る王座を眺めた。
別に、望んで王位を継いだわけではない。ただ、欲しいものを手にするのに、手っ取り早い手段だっただけだ。
今でもこの地位を恨むことも、妬むこともない。あるのは、自分の力と、それによる支配の必要性。
別に人を従えたいと思ったこともない。ただ、与えられたから、そうしている。
そして、息子にも同じ道を歩かせる。
それは、もはや避けられない何か。目に見えない縛り。
そんなものに捕らわれているつもりがあるわけではない。ただ、なさねばならないのだ。
金の縁で彩られた神々しいまでの王座を見飽きると、再び部屋へと視線を戻す。その時間は短いものだったが、彼には長く感じられた。
こんな自分でも、これからすることに、負い目を感じているのだろうか…。
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