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自分で、分かっている。 魔国に産まれ、育ち、実は魔国の者が持つ気性を、自分も宿しているのは、間違いない。 ただ、それを隠す術も身につけてしまっただけだ。 笑顔という仮面は、なんて楽なんだろうと。 だが、それも今日まで。 この身に付いた性格が一体どうなってしまうのか、怖くもあり、興味深くもある。 「姫…」 なにげに、ふと父が言った言葉を思い出す。 確かに、この笑顔の仮面、本物の笑顔として使えるなら、女性としては本望だろう。 だが、自分は別にこの性格が嫌いなわけでもなんでもない。むしろ、好きな方かもしれない。 父に対して憧れはある。愛情も、それなりにはある、と思う。 だが、同じモノになりたいとは、思えない。思わない。
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