水の色

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とある町の小学校から聞こえる、授業開始を知らせるチャイム。 4年2組の札がかかっている教室内。 柔らかく落ち着いた雰囲気の女性教師が教壇に立ち、口を開いた。 「今日は絵の具を使って先週遠足に行った時の絵を描きます。 昨日みんなが鉛筆で下絵を描いた画用紙を今から配るので、絵の具を机の上に出して水を汲んで来てください」 各生徒に1枚ずつ画用紙が配られる。 「汲みに行って用意ができたら始めて良いですよ」 はーい。と、まばらに返事をしながら水を汲みに次々と教室を出る生徒達。 椅子を動かす音が教室内に響く。 何人かで固まって行く女子、筆を持って友達をくすぐり出す男子・・・。 それぞれが絵の具用のバケツを持って水を汲みに廊下へ消えてゆく。 徐々に教室内が静かになっていく中、席に座ったままの少年が1人。 「清水くんどうしたの?絵の具、忘れちゃった?」 女性教師は少年に歩み寄り、優しい口調で尋ねる。 「・・・・忘れ・・・ました・・・・・・」 少年は俯いて答える。 青色の絵の具チューブを手の中に握り締めながら。 「先生のがあるから、今日はそれを使いなさい。次からは気を付けてね?」 「はい」 絵の具バケツに水を入れ終えた生徒達の流れに逆らうように少年は教室を出た。
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