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ステンレスの長い流し台。
均等に並ぶ蛇口。
その一番手前のバルブを捻(ひね)り、水を出す。
ジャアアアアア ザッ ザアアアア...
少年の足元。
上履きは何年も履き潰しているかのようにボロボロだ。
先週まで真っ白だったはずの布地は灰色にくすみ、所々に黒い染みや、落書きのような汚れが目立つ。
右足の内側には子供の指が入りそうな穴まで開いていた。
かかと部分には、かすれて読みにくいが【清水 俊】(しみず しゅん)と、少年の名前が書かれている。
...ザァアアア.. キュッ
少し小さめの絵の具バケツに水を入れ終えて、どこか重い足取りで元来た道を戻ってゆく俊。
教室内は生徒達の話し声が少し聞こえる程度で、静かだ。
木製の引き戸が微かにカラカラ音を立てて開き、入ってきた少年は戸を再び静かに閉めて自分の席へと向かう。
いくつかの視線を背中に感じながら。
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