第7話

17/38
前へ
/38ページ
次へ
しかも、スマホを私に返さずに、当然のように自分のスーツの内ポケットへと入れて運転を再開した。 私は声も出せず、動くこともできず、一連の華麗な流れをただ呆然と見るのみ。 会話の内容は絶対に聞かれてなどない。 第一、“田原さん”と名前を口走っただけで、電話の相手が男か女かもわからなかったはずなのに…… 勅使河原さんは雰囲気的に男だと察知したのだろうか……? ゴクン、と生唾をのんで。 冷静を装い、唇を開く。 「スマホを、返して下さいませんか?」 もちろん聞こえているはずなのに、無視してる。 色の無い瞳と、硬い表情。 それは、何を意味していますか?
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1029人が本棚に入れています
本棚に追加