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しかも、スマホを私に返さずに、当然のように自分のスーツの内ポケットへと入れて運転を再開した。
私は声も出せず、動くこともできず、一連の華麗な流れをただ呆然と見るのみ。
会話の内容は絶対に聞かれてなどない。
第一、“田原さん”と名前を口走っただけで、電話の相手が男か女かもわからなかったはずなのに……
勅使河原さんは雰囲気的に男だと察知したのだろうか……?
ゴクン、と生唾をのんで。
冷静を装い、唇を開く。
「スマホを、返して下さいませんか?」
もちろん聞こえているはずなのに、無視してる。
色の無い瞳と、硬い表情。
それは、何を意味していますか?
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