第7話

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とりあえず、この場をなだらかにおさめて、 店を出た後、きちんと断りを入れて帰ろう。 「…わかりました」 中をざっと見渡すと、 一粒石のシンプルなものが目に止まった。 「あれが素敵だと思います」 勅使河原さんが店員に目くばせをし、 それを受けた彼女は手持ちの鍵で錠をはずして中に手を伸ばし、迷わず9号を掴んだ。 サイズがあらかじめ伝えてあったとみえる。 「他に惹かれるものはないですか?  せっかくなのでたくさん選んで下さい」 隣にいるのが田原さんだったら、わざと高い物を選んで困らせてやろう、なんて悪戯心が出てしまうかもしれないけど。 今は浮かれて選べる状況ではない。
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