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「いえ、他には特には…」
私の目の前に指輪が差し出された。
勅使河原さんはすかさずそれをつまみとり、
私の左手首をそっととって薬指にはめた。
「ピッタリですね」
「…」
為す術もなくされるがままにしてるけど、
どんどん深みに嵌って行っているような気がしてならない。
「とてもよくお似合いです。そのタイプでしたら結婚指輪と重ねづけすることも可能ですし、長くお使いいただけますよ」
ついさっきまでは口を挟んで良いものか、どうしたものかと顔色を伺っていた店員が急にテンポよく説明をし始めた。
店内は私一人を除き、まろやかな空気に包まれつつある。
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