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「さて、食事に行きしましょうか。フランス料理のコースを予約してあるんです。」
さっき結婚の話を断ったというのに、全く何事もなかったかのように話が進められている事にさすがに苛立ち始めた。
第一、お気楽に食事をする気分なんかじゃない。
それらが顔に出ていたようで、
勅使河原さんはくすっと笑って自分の親指で胸元を指した。
「あなたのスマートフォンが、ここにあることをお忘れなく」
言葉には
多少の威圧が含まれていて、
「それに、今キャンセルをすると店にも大変な迷惑がかかる。
そう思いませんか?」
私が断れないように、どんどん重しをのしつけてくる。
「行きましょう」
助手席のドアを開け、車に乗るように促されて。
「……」
黙って座る他、手立てはない。
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