第7話

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店内には上品でムーディーな曲が流れていて、 テーブルの向こう側にいる勅使河原さんは悠々と食事をすすめている。 勅使河原さんに人為的に作った波に乗せられ、ここまで来てしまったけど……。 話途中になってしまっている田原さんのことが猛烈に気になる。 きっと田原さんは心配して何度も電話を入れているに違いない。  早く連絡して安心させてあげたい。  そして…会って、これまでのすれ違いの縺れを解きたい…… 「あまり箸が進んでないようですが、お口に合いませんか?」 解決の糸口らしきものを掴んでいるというのに、それを辿ることをこうして阻まれていて…もどかしい。 「いえ、普段食べ慣れてないだけで…とても美味しいです」 せっかくの高級フランス料理だけど全く楽しめない。 何を口に含んでもゴムを噛んでいるようなものだ。
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