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店内には上品でムーディーな曲が流れていて、
テーブルの向こう側にいる勅使河原さんは悠々と食事をすすめている。
勅使河原さんに人為的に作った波に乗せられ、ここまで来てしまったけど……。
話途中になってしまっている田原さんのことが猛烈に気になる。
きっと田原さんは心配して何度も電話を入れているに違いない。
早く連絡して安心させてあげたい。
そして…会って、これまでのすれ違いの縺れを解きたい……
「あまり箸が進んでないようですが、お口に合いませんか?」
解決の糸口らしきものを掴んでいるというのに、それを辿ることをこうして阻まれていて…もどかしい。
「いえ、普段食べ慣れてないだけで…とても美味しいです」
せっかくの高級フランス料理だけど全く楽しめない。
何を口に含んでもゴムを噛んでいるようなものだ。
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