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私が疑問をぶつけたら、田原さんは慌てて
“全部誤解だ”と言ってくれるはず。
その…はず。
そう思いながらも、心の均衡を失った私は全く別行動をしていて、
足は階段を下り始めていた。
もう、一秒もこの場にはいたくない。
ここから離れたい―――
マンションを出るとみぞれに似た雪が降り出していた。
トボトボと駅に向かう道、
人と人の合間を縫うように進んでゆく人達に何度も抜かされて。
冷えきった肩の上に虚しさが上乗せされてゆく。
立ち止まり、
空を仰ぐ。
あの女の人が家族や身内ではないことなど、
昼間見たシーンからも、雰囲気的にもわかる。
私、
何を信じて、何をどうすればいい……?
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