第7話

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「…あっ、すみません」   相合傘で肩をすり寄せ合うカップルにぶつかり、バッグが道路に転がった。 踏んだり蹴ったりだ。 「…いえ、大丈夫です」 屈んで拾い上げる時、 方々からの好奇混じりの視線が瞬時に散ったのを感じた。 川島駅前には白い息を吐き、震えながら立ち並ぶ人でいっぱいだ。 彼らには暖かい笑顔とともに迎えがもうすぐやってくる。 でも、私には―――…  傘もささずに歩いてきた自分の惨めさが、 いっそう際立った瞬間だった。
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