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森の最奥に、とある芸術家が一人でひっそりと暮らす小屋がある。
記者は片手に菓子の包みを持ち、ドアを叩いた 。
「いらっしゃい。どうぞお入りください」
明るく出迎える声を受け、慣れた様子で中へ入る。
親しげに談笑する、芸術家と記者。
テーブルには香り高い紅茶と、それは美しい赤色をした新鮮な…
苺。
「いつかお聞きしたいと思っていたのですが、
先生のペンネームは一体何から取ったのですか?」
質問を受け、 先生と呼ばれたとても人当たりのいい中年の男は笑顔で答える。
「僕のペンネームは、あの人形の名前を借りたんですよ。
ほら、あそこに2体の人形がいるでしょう。 あれの男のほう。
綺麗な顔をした若い男の人形から名前を借りて、
ちょっとかっこつけてみたんですよ」
芸術家の中年の男は、記者と顔を見合わせ、楽しげに笑った。
「あの人形たちは、知人の人形師が作ったものなんですがね、
なんでも、男のほうを作り終えたその日の夜から、
夢で『悪魔、悪魔』と罵られるようになったとか言うんですよ。
興味が湧いたから僕が引き取ってみたんですが、
なに、まったくもって普通の人形でしたよ。
見ての通り、何の変哲もない、ただの人形です」
終
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