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森の最奥に住む、芸術家の青年。
彼の素性を知る者は誰ひとり存在しない。
しかし、ただひとつ。
彼と仕事で関わる数人の人間の口から、 その美貌だけはそこはかとなく知れ渡りつつあ った。
ある日の深夜。
人を愛することを知らずに生きてきた青年が、
なんとなく寝付けずにふらふらと歩いていた森 の入り口で、
一人の女性に出会い、初めて恋に落ちた。
夜の散歩に来たという彼女と青年は、
ほんの僅かばかり、星空を見上げながら会話を 楽しんだだけ。
ただそれだけで、 人を愛したことのないこの青年が、
夜の闇の中でろくに顔も見えない女性に心を奪 われた。
彼女は12時になると逃げるように帰って行っ た。
残念ながらガラスではないが、 青年好みな美しい赤色の靴を片方残して。
美貌の青年がシンデレラ探しをしているという 噂を聞き付け、
彼とお近づきになりたいむすめ達が、
一人、また一人と森の最奥にある彼の小屋まで やってくる。
さて、今日のお客様は一体どなたでしょう。
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