本編

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やっぱり答えてくれないのですね。 あの時と一緒ですか…。 でもね、あの後、明かりの下であなたの落とした靴を見て、 ちょっとだけ気になったことがあるんですよ。 この靴……見覚えがありましてね。 大きさはかなり違うんですが、この色、デザイ ン、素材。 これと同じものを、僕は毎日何の気なしに目にしていた。 昨日まで、ね。 正直な話、僕は今とても怖れている。 あなたが何者かを知ることが怖くてたまらない 。 しかし、もう答えはここまで出てしまっているんだ。 ここまで来たら、明らかにするしかないでしょ う。 …お客さん、そのコート脱いでくれませんか? きっとコートの下には、見覚えのある赤い服が 隠れているはずです。 もういいでしょう? お互い潮時なんですよ。 化粧を落とせと言わないだけ有難いと思ってくださいよ。 認めたくなかった。 けど、もう認めざるを得ません。 「あの人」と会った日から、僕の気に入りの人形が、 靴を片方履いていないのです。 「あの人」が落とした靴に見覚えがあるのは当然です。 いつも見ていた人形が、同じ形をした靴を履いていたのですから。 …そして、 今朝、人形が消えた。 入れ替わりにあなたがやって来た。 明らかに違和感のある格好をして。 フフフ、そりゃ僕だって不機嫌にもなるでしょ う? 頭の中の整理が全くついていないのに、 どうやってお客さんをもてなせばいいんだか。 …あーあ、やっぱり林檎、食べないんですね。
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