0人が本棚に入れています
本棚に追加
やっぱり答えてくれないのですね。 あの時と一緒ですか…。
でもね、あの後、明かりの下であなたの落とした靴を見て、
ちょっとだけ気になったことがあるんですよ。
この靴……見覚えがありましてね。
大きさはかなり違うんですが、この色、デザイ ン、素材。
これと同じものを、僕は毎日何の気なしに目にしていた。 昨日まで、ね。
正直な話、僕は今とても怖れている。
あなたが何者かを知ることが怖くてたまらない 。
しかし、もう答えはここまで出てしまっているんだ。
ここまで来たら、明らかにするしかないでしょ う。
…お客さん、そのコート脱いでくれませんか?
きっとコートの下には、見覚えのある赤い服が 隠れているはずです。
もういいでしょう? お互い潮時なんですよ。
化粧を落とせと言わないだけ有難いと思ってくださいよ。
認めたくなかった。 けど、もう認めざるを得ません。
「あの人」と会った日から、僕の気に入りの人形が、 靴を片方履いていないのです。
「あの人」が落とした靴に見覚えがあるのは当然です。
いつも見ていた人形が、同じ形をした靴を履いていたのですから。
…そして、 今朝、人形が消えた。
入れ替わりにあなたがやって来た。
明らかに違和感のある格好をして。
フフフ、そりゃ僕だって不機嫌にもなるでしょ う?
頭の中の整理が全くついていないのに、 どうやってお客さんをもてなせばいいんだか。
…あーあ、やっぱり林檎、食べないんですね。
最初のコメントを投稿しよう!