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「あ、ここに居たんだ?」
高層マンションの広々とした屋上に、聞き慣れた声が後方から響く。
じろっと肩越しに覗くと、栗色の短い髪を風に靡かせて立っていた。
そして、此方に向かって歩いてくる。
俺は視線を戻し、柵に肘を付きながら、
空を───いや、月を見る。
「その青いブレスレットは月乃のだよね?」
「……もらったんだよ、アイツが死ぬ前日に」
月乃。
それが俺の仲良くしてた奴の名前。
楽しいと思える学校生活にしてくれたのはコイツのお陰だ。
そう思ってる。
会話は途切れ、耳には風切り音しか入ってこなくなった。
月は三日月、今日の月はオレンジに煌めいていた。
星もキラキラと存在を放ち、アピールしてる。
駄目だ、この星空も月も鬱陶しい。
「……どうかしたの?」
あぁ、どうかしたんだろうね俺は。
月乃が死んでから、壊れた。
上げた腕の青いブレスレットが光を反射する。
それは霞み、隣の奴へと向かってく。
赤と青が混ざり合い、暖かい赤が僕に降り注ぐ。
いつの間にか持っていたカッターナイフは液体を滴らせて。
自分の首へと入ってくる。
力が入らなくなり、抗うこともやめて倒れるとすぐに視界が霧がかって、見えたのは。
嘲笑ってるような三日月。
哀しい表情をした月乃。
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