54人が本棚に入れています
本棚に追加
目標物に先端がかかった。
落とさないように、ちぎらないように、そっと先端を引っ張っていく。何度か引っかけ直しながら、ヨシの耳穴の中にある塊を外へ導いていく。
「……うわあ」
ずるずると引っ張り出してみたが、マナの予想よりも長さがある。
耳穴から3センチほど離れたところまで取り出したにも関わらず、耳垢の尻尾はまだ穴の中だ。
「ヨシ君、なにこれ」
うわあ、うわあと言いながら、マナはゆっくりと耳垢を引っ張っていった。
通常の耳垢と言えば、大きくても小指の先くらいのサイズだろう。それが、糸のように細長く、どこまでも続いている。
……おかしい。
マナが疑問を感じたそのとき、薄黄色だった耳垢の色が赤く変わった。
感触も、パリッとちぎれそうな乾いたものから、ぬるぬると湿ったものに変わっていく。
「な……」
最初のコメントを投稿しよう!