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第1話
岡野(まさか、いきなり、葛原さんが触ってくるなんて……)
オフィスの中なのに、指先が小刻みに震えて止まらない。
まなじりに涙が滲みそうだった。
薄い胸板の内側で、心臓が激しく脈打ってる。
葛原「どうかしたか?」
岡野「い、いえ……なんでもありません」
(人に触られると、どうしたって、震えが起きる……僕、人に触れられるのが怖いから……)
葛原「なんでもないわけないだろ?顔色が真っ青だぜ」
澄んだ鳶色の瞳を向けられても、視線を合わせられない。
岡野「ちょっと、貧血が……」
葛原「はあ?体、弱すぎだろ?とにかく、座れよ。そこが、お前の席だ」
岡野「すみません」
一歩、イスに座ろうと歩き出すと、足がよろめく。
岡野「っ!!」
葛原「岡野っ」
葛原さんが転びかけた僕のお腹のあたりに、さっと腕を差し入れる。
岡野「あっ」
おかげでどうにか、思い切りひっくり返らずに済んだけれど、ざっと肌が粟立った。
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