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緊張しつつ、まずは社長室に入る。
最初に目に飛び込んできたのは、大きな窓の外に見える高層ビル。
そして自分の立っているところも、それに負けないくらい高い。
岡野(わー、空が近い……さすが、最上階のワンフロアを借りきってるオフィスだけのことはあるなぁ……)
目の前正面に、その高層ビルを背負うようにして、このオフィスの社長が立っていた。
最初、逆光で眩しさに目がくらむ。
喜多嶋「今日から、ここがお前の会社だ」
数歩、僕に近づいた喜多嶋社長は癖のない髪を揺らし、余裕のある笑みを浮かべていた。
ほのかなオードトワレの香りが鼻をくすぐる。
岡野「よろしくお願いします」
さっと頭をさげると、視界に喜多嶋社長のストレートチップな靴先が目に入った。
岡野(社長の靴、かなり高いよね。……いかにも、仕事ができそうな感じ……さすが、株式会社ラクルのトップだ)
ラクルの社長・喜多嶋彰さんは肌触りのよさそうなダブルのスーツを、さりげなく着こなしている。
足元はブランド物の靴で、上質なフォルムが質実剛健ならしさを出していた。
男らしい首元にはぱりっとアイロンの効いたえりが覗いていて、いやみがない。
喜多嶋「うちがARなどのアプリを作る開発部門と、イベントの総合プロデュースをする部門があるのは知ってるな」
岡野「はい」
起業して、あっという間に上場した新進気鋭の広告代理店。
最近ではイベントでも、プロジェクションマッピングに力を入れていて、何度もメディアに取りあげられている会社だ。
岡野(少数精鋭と聞いていたから、まさか入れるなんて……まだ夢みたいだ……)
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