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視線をあげると、葛原さんが頭のてっぺんからつま先まで僕を観察し始める。
葛原「……お前……なんか小動物みたいだな?」
岡野「へ?」
葛原「あー、そうか」
すっと彼の手が僕の胸元へと差し入れられた。
びくっと体が硬直する。
岡野(うわあああああぁっっ!?)
葛原「1個半以上開いてるな。それで、よけい小さく見えるんだ」
驚いたけれど、こぶしにしているところを見ると、身幅をチェックしているらしい……。
岡野(なんで……?胸がざわざわするよ……)
葛原「それ、リクルートスーツのままだろ?しかも既製品だな。袖口が隙ありすぎで肩幅もあってない。ちゃんと採寸してもらった方がいい。仕事できないうちは、格好だけでもぴしっとしとけよ」
岡野「すみません。初めてで……」
葛原「ボーナスが出たら、仕立て直した方がいいんじゃないか?」
岡野「そ、そうします」
身を堅くしながら、僕は答えた。
すっとようやく手が離れていく。
岡野(わぁ……まだ……触られた感覚が残ってる……)
僕はばくばくする心臓の音を鎮めようと、ゆっくり深呼吸をした。
無防備な僕に大胆に触れてきた葛原さんに、かすかな怯えを感じる。
岡野(全身に立った鳥肌に気づかれてないといいけど……)
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