プロローグ アーベの業火

3/9
前へ
/289ページ
次へ
 婚礼の相手は下町に住むごく普通の娘だが、気だてがよく頭がよく回る娘だったという。周りからは過ぎた嫁だとはやし立てられ、からかわれた。最初は見向きもされなかったが、根気よく口説き続けた結果がついに実ったのだった。  あこがれていた騎士の身分と美しい妻をほぼ同時に手に入れた彼の意気込みは天にも昇るようだったと言う。  その勢いで魔物など、簡単に討伐して意気揚々と凱旋し、二人の間にさらに大きな華でも咲かそう。  そう周りには語っていたらしい。  騎士団の仲間も、そんな幸せ一杯となっている青年に最高の華を持たせてやろうと士気は高かった。  しかし、いざ討伐となると魔物は騎士団が思っていたよりもはるかに強力だった。  騎士団は、自分たちに倒せない者などなにもないと高をくくり、彼らは地方騎士の忠告を聞いていなかったのだ。  
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加