42人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
草木も眠る丑三つ時。
――だったかどうかは覚えていない。
真夜中、引き絞られるような苦しさに、目が覚めた。
普段は一度寝たらテコでも起きない、睡眠大好き人間の私が、である。
夜中にトイレに起きたとしても、記憶にない。
トイレに行く途中の廊下で派手にスッ転び、青アザを作ったとしても、全く覚えていない。
一度寝たら起きないことにかけては、筋金入り。
その私が。
あまりの苦しさに目を覚まし、そして、
それが未知との遭遇の始まりであった。
山口県の瀬戸内海に面した、とある街の外れに、我が家はある。
固定資産税評価額わずかに77万円。
既に減価償却しきった、築45年の木造平屋建て一軒家。
家が奥まった場所にあり、道から見えないのをコレ幸いと、庭は荒らし放題。
雨上がりや露に濡れた朝、
庭を歩くと、膝から下はびしょ濡れになるほどの、草ボーボー。
私のいつも歩くルートだけが、獣道となって草が生えないという、恥ずかしながらの体たらく。
人呼んで
『🌕🌕地区のオバケ屋敷』
そんな我が家で、ズボラを極めた一人暮らしを謳歌しているオバちゃん。
それが私である。
元来、我が家は何人たりとも来る者拒まず、出入り自由。
近所の子供も入って遊ぶし、私も鍵などかけず……いや戸すら開きっぱなしで、ホイホイと出かける。
第一、鍵がない。ある日うっかり紛失したらしく、
そのうちひょっこり見つかるさ。
と思っていたら、いつの間にやらそれから10年経っていた。
田舎万歳である。
最初のコメントを投稿しよう!