第5話

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出張から帰って翌日ーー。 オフィスの中は、今日も慌ただしい。 岸「岡野、これのコピーを取ってくれ」 岡野「はい」 すぐにコピー機のそばへと向かう。 岸「なんか、岡野の雰囲気変わってないか?」 葛原「そうですか?」 岸「ああ。前はもっとおどおどしてたのに、なんか壁がなくなったというか……」 葛原「仕事に慣れてきたんでしょ?」 岸「そうだとしたら、喜ばしいな」 岡野(葛原さんとの特訓の効果だ。書類の受け渡しのときだって、指先が触れるかもって怖がらなくて済むようになってきたからね) 自信を持つにしたがって、仕事にも積極的になれてきた気がする。 岡野(調子いいよね、僕って!) 意気揚々という感じで、デスクに戻った。 葛原「いいみたいだな」 岡野「はい。これも、葛原さんのおかげです」 葛原「俺はいじめる相手ができて嬉しいから、別に礼なんていらない」 葛原さんがそんなことを言いながら、湯気のたつコーヒーカップに手を伸ばそうとした。 その手が滑る。 葛原「あつっ!!」 カップがひっくり返り、熱いコーヒーが葛原さんの手にかかった。 岡野「大丈夫ですか!?」 僕はとっさに、葛原さんの手を取る。 本当に無意識に、そうするのが自然な感じで……。 でもそれは、接触恐怖症の僕にとっては、画期的なことだったーー!
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