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僕が見ている夢の場面が、
今、僕が住んでる大きな家の
豪華な寝室へと変わった。
壁にはモネの絵画、
窓際にある色とりどりの花たち。
そしてその花たちをよりいっそう引き立てているフランス製の高価な花瓶。
子供の頃とは真逆の生活がそこにはあった。
何も持っていなかった僕は、
自分の容姿の良さと巧みな話術で、
今の幸せを勝ち取った。
僕の妻の静子は、
資産家の娘だった。
僕は、
幸せな気持ちで夢を見ていた。
僕のとなりで寝ている
美しい妻の静子。
僕が憧れていた
贅沢な暮らし。
子供の頃に夢見た生活が、
今、僕の手の中にあった。
〈 お父さん、お母さん。
僕は、
あなたたちとは違いました。
僕には今、
幸せがあります。
あなたたちが、
どんなに望んでも
手にいれられなかったものが、
今、ここに揃っています。
僕は今、
とても幸せです。
僕は、
あなたたちのようにならずにすんだから…… 〉
僕が夢の中で、
ぼんやりとそんなことを思っていると
僕の背後から
聞き覚えのある声がした。
「お久しぶり……」
僕がその声に
ハッとして振り返ると
そこには、
僕が会いたくなかった一人の女性が立っていた。
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