第1章

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ミーンミーン..... それは、ひどく暑い夏の日だった。 様々な木々から蝉の声が聞こえ、照りつける太陽に文句を言いたくなるような昼下がり。 公園には、子供を連れた母親や夏休みであろう小学生達で賑わっていた。首筋の汗を薄い水色のタオルでふき取りながら、神田誠一は先程買ったお茶を喉をならして飲んでいく。 「あちぃ・・・・・」そう呟いた神田の声は蝉の声でかき消される。何でこんな暑い日にイベントなんてすんだよ。神田は深い溜息をついて、目を瞑った。 神田は1年前からとある警備会社に勤めている。 大学を卒業後、一度は就職をしたがわずか一年足らずで辞めてしまった。 新しく職を探している時に現在の警備会社を見つけ、幼い頃よりアクション映画が好きで習っている護身術を使えるかもしれないと軽い気持ちで正社員への面接を受けた。 この不景気の中で簡単に再就職が見つかるとは思っていなかったが、見事に合格した。 「世の中甘くないもんだよな。」神田は飲み干したペットボトルのお茶をゴミ箱に捨て、公園を後にした。 警備会社と言っても神田の仕事は契約会社への警備の派遣、今日のようなライブやイベントでの整備や不信人物がいないかとの会場の見回り。 神田が考えるような護身術での対応などはなかった。
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