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第8話
オフィスに差し込む西日が、目に眩しい。
葛原さんに、かなりセレブのフィアンセがいると知って、僕は動揺しまくりだ。
岡野「葛原さんにフィアンセがいるなんて、初めて聞きました」
(声、震えてないよね)
土師「なんだよ、知らなかったのか?確か、倉澤まどかさんだったですよね」
土師さんが岸さんに確かめるけれど、スルーされてる。
岸「…………」
岡野(プライベートなことだから、黙っているんだろうけど……ってことは、本当なんだ……)
「倉澤さんってことは、まさか、あの倉澤コンツェルンってことですか?」
土師「そうだよ。うちの実家とも取引があるけど、とにかく格上の旧財閥だよ。昔の貴族とかで、鼻にかけてるところがあるんだよな。しかも、葛原はそのフィアンセと結婚して、海外で親の会社を継ぐって噂もあるくらいだから、うらやましいくらいだよ」
岡野「結婚、海外……」
(どうしよう。頭がうまく働かない……)
岸「土師から鼻にかけてると言われるとなると、相当だな」
岡野(うわ、毒舌っ)
でも、それで土師さんは退散していった。
岸「岡野、大丈夫か?顔が青いぞ」
岡野「えっ……だ、大丈夫ですよ。いいなあ葛原さん、そんなステキなフィアンセがいるんだ」
(自分でもびっくりするくらい棒読みだ)
岸「親の取り決めだけだと聞いてる」
岡野「!!」
(でも、葛原さんにとっては、それが一番のしあわせだよね。たとえば、男同士で不毛な恋愛をするより……)
そこまで考えて、自分がなにを葛原さんに感じていたのか、ハッキリとわかった。
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