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葛原「出るぞ。来いよ」
岡野「は、はい」
あわてて、追いかけるようにエレベーターから廊下へと出る。
出たところで、くるっと葛原さんが振り向いた。
葛原「おかしな噂を信じるなよ」
岡野「ごめんなさい……でも、本当に、それでいいんですか?親の後を継ぐことを迫られてるんじゃ……」
葛原「俺が、海外へ行けばいいと思っているのか?」
岡野「っ」
言いながら、葛原さんが迫ってくる。
追い詰められて、壁に背中がとんっとついた。
岡野「そんなわけありません。でも、もしそうなら、僕も気持ちの整理をつけなきゃいけないって」
その言葉に、葛原さんが眉を動かす。
葛原「勝手に、気持ちの整理なんかつけるなよ。俺の気持ちはどうなるんだ?」
岡野「葛原さんの気持ちって……」
今まで顔を近づけてきてたのに、その段になって、ぷいっと横を向かれた。
照れたような、不本意なような横顔に胸が高鳴る。
葛原「っ」
息を飲んでしまった葛原さんの次の言葉を待つけれど、なかなか口を開かない。
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