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岡野「……やっぱり、どこかへ行く気なんですか?」」
葛原「そんなわけないだろ。第一、お前を置いて行ったら、取られる」
岡野「っ!!!」
(取られるって……他の人にってこと?)
目を大きく見開く僕に、今にも噛みつきそうな距離で葛原さんの顔が接近。
葛原「いいか?他の男を選ぶことは許さない」
岡野「そんなこと、ならないのに……」
笑おうとするけれど、葛原さんはあくまで真剣だ。
葛原「バカ。そんなのは、お前が思ってだけだ。鷲見社長だって、喜多嶋社長だって油断はならないんだからな。岸さんは魔性だし……」
岡野「葛原……さん……」
葛原「いいか、それでも俺を選べ。お前のために言ってるんじゃないぞ。俺のために選べ」
ひどく強引に、畳みかけるように言われる。
岡野「葛原さんのために?」
葛原「俺にとって必要だから、俺のために決まってるだろ?」
岡野「でも、僕は最初から、葛原さんしか目に入ってないのに」
葛原「っ!本当か?」
岡野「こんなことで、ウソは言えない」
葛原「そうだな。お前は、そんなウソはつかないやつだよな」
いつもはツンとした顔つきの葛原さんが、劇的にふわりとやわらかい微笑みを浮かべた。
そして、僕をまっすぐな鳶色の瞳で見つめる。
髪を撫でられ、頬に手を添えられ、吐息が僕のくちびるをくすぐった。
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