第9話

3/13
前へ
/39ページ
次へ
岡野「……やっぱり、どこかへ行く気なんですか?」」 葛原「そんなわけないだろ。第一、お前を置いて行ったら、取られる」 岡野「っ!!!」 (取られるって……他の人にってこと?) 目を大きく見開く僕に、今にも噛みつきそうな距離で葛原さんの顔が接近。 葛原「いいか?他の男を選ぶことは許さない」 岡野「そんなこと、ならないのに……」 笑おうとするけれど、葛原さんはあくまで真剣だ。 葛原「バカ。そんなのは、お前が思ってだけだ。鷲見社長だって、喜多嶋社長だって油断はならないんだからな。岸さんは魔性だし……」 岡野「葛原……さん……」 葛原「いいか、それでも俺を選べ。お前のために言ってるんじゃないぞ。俺のために選べ」 ひどく強引に、畳みかけるように言われる。 岡野「葛原さんのために?」 葛原「俺にとって必要だから、俺のために決まってるだろ?」 岡野「でも、僕は最初から、葛原さんしか目に入ってないのに」 葛原「っ!本当か?」 岡野「こんなことで、ウソは言えない」 葛原「そうだな。お前は、そんなウソはつかないやつだよな」 いつもはツンとした顔つきの葛原さんが、劇的にふわりとやわらかい微笑みを浮かべた。 そして、僕をまっすぐな鳶色の瞳で見つめる。 髪を撫でられ、頬に手を添えられ、吐息が僕のくちびるをくすぐった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加