91人が本棚に入れています
本棚に追加
岡野「本当に海外の会社に行ってしまうんでしょうか?」
岸「さあ、それはないと思うが……。葛原は、うちの喜多嶋社長が惚れこんで、他社から引き抜いた人材だからな」
岡野「そうだったんですか?」
岸「ああ、そのときに確か親の経営する系列会社だったはずだ。本人的には、それも嫌だったらしい。どんなに頑張っても、親の七光としか言われないからな」
岡野「そんなことありません。葛原さんは、本当に優秀で」
僕がむきになると、岸さんは微笑んだ。
岸「そうだな。だから、よそに行くことはないと思う。ただ……」
岡野「ただ?」
岸「責任感も強い男だから、いずれはというのは考えてるかもしれない」
岡野「っ!!……そ、そうですよね」
(そのいずれか、が、今じゃない保証はない……)
ひどく胸が痛かった。
岡野(一緒に働けなくなるなんて想像できない。そんなのは、すごく嫌だ……)
岸「どうかしたか?」
岡野(そっか……僕は……先輩としてでも、友達としてでもない気持ちを持ってたんだ。触れられて平気だったのも、もっと触れてほしいと思ったのも、そのせいで……)
「僕は……」
岸「岡野?」
岡野「!!すみません。ちょっと、ぼおっとして……」
(……こんな気持ちのままじゃ、葛原さんのそばにいられないよね……きっと、迷惑だ……今までだって、さんざん迷惑をかけてきているのに……)
最初のコメントを投稿しよう!