第8話

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岡野「本当に海外の会社に行ってしまうんでしょうか?」 岸「さあ、それはないと思うが……。葛原は、うちの喜多嶋社長が惚れこんで、他社から引き抜いた人材だからな」 岡野「そうだったんですか?」 岸「ああ、そのときに確か親の経営する系列会社だったはずだ。本人的には、それも嫌だったらしい。どんなに頑張っても、親の七光としか言われないからな」 岡野「そんなことありません。葛原さんは、本当に優秀で」 僕がむきになると、岸さんは微笑んだ。 岸「そうだな。だから、よそに行くことはないと思う。ただ……」 岡野「ただ?」 岸「責任感も強い男だから、いずれはというのは考えてるかもしれない」 岡野「っ!!……そ、そうですよね」 (そのいずれか、が、今じゃない保証はない……) ひどく胸が痛かった。 岡野(一緒に働けなくなるなんて想像できない。そんなのは、すごく嫌だ……) 岸「どうかしたか?」 岡野(そっか……僕は……先輩としてでも、友達としてでもない気持ちを持ってたんだ。触れられて平気だったのも、もっと触れてほしいと思ったのも、そのせいで……) 「僕は……」 岸「岡野?」 岡野「!!すみません。ちょっと、ぼおっとして……」 (……こんな気持ちのままじゃ、葛原さんのそばにいられないよね……きっと、迷惑だ……今までだって、さんざん迷惑をかけてきているのに……)
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