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窓の外には高層ビルの夜景が、きらめいている。
オフィスの中は、とても静かだ。
岡野(どうしよう……葛原さんとふたりっきりで残業になっちゃったよ……)
緊張しながら、仕事を続ける。
葛原「岡野、ここの数値がおかしいぞ」
隣の葛原さんがイスを寄せて声をかけてきたので、僕はびくっと引いてしまう。
岡野「わ、わかりました。すぐ修正します」
葛原「?」
岡野(今、変に思われたよね……)
葛原「それから、別件で頼みたいことがあるんだけどな」
岡野「あ、でも、明日は忙しいから、それは土師さんにでも……」
葛原「お前、いつから仕事が断れるほどえらくなったんだ?」
ぎろりと睨まれた。
岡野「っ!!すみません」
葛原「別に……忙しいなら、いい」
岡野「はい……」
(だって、これ以上一緒にいたら、きっと気持ちが隠せなくなる……今だって、こんなに苦しいのに……)
葛原「お前、なんか、おかしくないか?」
岡野「え?そうですか?」
葛原「どうも俺を避けてるような気がするけど」
岡野「……そんなことありませんよ」
葛原「……ふうん」
岡野(うまくごまかせたかな?でも、なんか視線が冷たい……)
葛原「それ終わったら、帰るぞ」
岡野「いえ、先にどうぞ」
(一緒に帰るなんて、今の状況だと、無理だし……)
葛原「お前、やっぱりなにか隠してるだろ?俺が帰った後、ひとりで何かする気か?」
岡野「そんなことないです」
葛原「じゃあ、帰るよな」
岡野「は、はい」
(そんな怜悧な表情で言われたら、ついていくしかないよ……)
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