第8話

5/8
前へ
/39ページ
次へ
葛原「お前、どうした?震えてるぞ?」 岡野「ちょっと、……」 (どうしよう。暗いと、事故を思い出しちゃうよ……怖い。父さんと母さんを失った日のことが、フラッシュバックする!) 耳の奥底からサイレンが聞こえてくる。 それが、胸を潰しそうだ。 葛原「岡野、大丈夫か?」 岡野「大丈夫じゃないみたい」 ガチガチと歯を鳴らしながら答える。 葛原「じゃあ、俺を頼れよ」 岡野「っ!!」 目を見開き、声の方に顔をあげる。 葛原「ヒロっ、俺には甘えろ」 初めて名前で呼ばれたと思った後、包み込むように優しく胸に抱きこまれた。 岡野「っ!!」 息が止まる。 それと、同時に震えも止まった。 葛原「……ヒロ」 また熱く耳元で名前を呼ばれた。 岡野「すみません。事故のこと……思いだしちゃって……足がすくんで……」 鍛えられたしなやかな筋肉に覆われた胸元に、僕はすがりつく。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加