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岡野(もう、離れようと思ったのに……でも、今だけは……)
葛原「俺が触れるのは、いいんだよな。それとも抱き締めたのは、まずかったかとか言うのか?」
岡野「いいえ……いいんです。少しだけ、このまま……」
ようやくそう言えると、葛原さんがぎゅっと抱きしめる力がより一層強くなった。
岡野(……葛原さん、あったかい……さっきまで、あんなに怖かったのに……今は、気持ちが落ちついてる……)
あたたかく包み込んでくれる腕の中、僕は大きく息を吐いた。
葛原「ん?復旧するようだぞ」
岡野「あっ」
パチパチっと、あたりが明るくなる。
それと同時に、僕は葛原さんから体を離した。
岡野「ありがとうございます。おかげで、落ち着けました」
葛原「別に……こっちだって大声を出されたら、たまらないからな」
岡野「……そ、そうですよね。僕、いつも迷惑かけて……」
葛原「ちっ」
もどかしそうに、葛原さんが舌うちする。
葛原「違う」
岡野「え?」
葛原「俺を頼ってくれていいって言っただろ?」
岡野「……でも、それに甘えちゃって……」
(もう、こんなことは止めようって思ってたのに……)
葛原「それでいいって話してるんだろ?」
岡野(いらつかせてる?やっぱり僕が、変に甘えたから?)
「エレベーターからは、もう出られるんですよね?」
扉の前に立つと、いきなり閉ボタンを押された。
岡野「っ!!」
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