Ⅷ 然して我らは抗う

46/61
前へ
/1206ページ
次へ
──────────  IМIを出た如月は、千早の運転で都内を走っていた。  車を走らせて到着した場所は、《準進行不可区域》の瀬戸際だった。ここからは、瓦礫の奥の《進行不可区域》も良く見える。  その場所には、既に一台の車が停まっていた。千早は相手の車とすれ違うようにして、後部座席に座る如月と運転手の真横につけた。  運転席の窓が開く。いたのはスーツを着た一人の若者。岡田亮という名前の青年だった。 「お久しぶりです。如月学園長」 「久しいな。少し痩せたか?」 「まぁ、そうです」  苦笑した岡田は、助手席に置いていた茶封筒を渡した。資料でかなりの厚さだった。 「紙媒体で現存している資料の全てです。それと、データ化した資料を保存した記録媒体数個が中に。ご自由にお使いください」 「助かる」 「使い道があって良かったです」 「拓也は、元気かね?」  如月の問いに、岡田の口は止まった。  如月の戦友であり親友以上だった内藤拓也は、元IМI連盟局局長であり、岡田は内藤の秘書だった。  内藤は、自分の復讐の為にIМIを巻き込んだ故、拳銃自殺に失敗した後、局長を辞任して入院していた。  岡田が手渡した資料とは、内藤が収集させた《進行不可区域》の情報だった。
/1206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

195人が本棚に入れています
本棚に追加