Ⅷ 然して我らは抗う

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「それで、呼んだ理由は?」  煙草の灰を灰皿に落とした岸に、長谷川は静かに口を開いた。 「今回の出来事に介入しないでいただきたい。ただそれだけです」 「黒井沙耶の件か」 「貴方が興味ないのは知っています。だが、政治屋は違う。黒井沙耶もそうだが、《進行不可区域》への進入を彼らは嫌がる。既に警戒されています」 「《リスクコントロール・セキュリティ社》の武装解除を命じたのは把握している。これ以上の問題事には介入させない方針へさせた。まぁ、大事になった故の対処だろう。防衛省も、彼らとの関係性を知られるのは困る」 「でしょうね。黒井沙耶を切り捨てる良い機会にもなった」 「あのお嬢様は残念だが、お前の言う通りだ。展示会の一件から防衛省は黒井沙耶との関係を匂わせて、彼女一人に集中させた。少し調べれば僅かしか関わっていないのに、馬鹿は全てやったと思い込んで叩く」 「批判を少しでも開発企業から遠ざけたい。防衛省はそれだけ無人爆撃機に期待しているらしいですね」 「ああ。完成すれば、隣国だけでなく同調する周辺国にも影響を与えられる。抑止力と撃滅能力を兼ね備えた素晴らしい兵器になる。……私はあまり賛成していないがね」 「理由を聞いても?」 「防衛の観点から言えば賛成だが、どうやら上の観点は積極防衛寄りの運営を考えている。まぁ爆撃機だからそうだろうが、私は専守防衛の言葉が好きだ。そういった個人的な理由でね」  子供っぽく笑った岸は、吸い終わった煙草の火を灰皿に押し付けて消した。
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