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「そんなあの人達だ。《進行不可区域》への進入は許さないだろう。IМIが独断で進入した場合、何らかの制裁措置を出すことも考えている」
「面子の問題ですか」
「然るべき対応をしたことが重要だ。今回の動きは重く見ている。黒井沙耶の襲撃案件で軍事企業とマフィアを暴れさせただけでなく、CIAまでも介入していた。我が国の防衛能力の脆さを露呈させてしまった形だ。結果的に相手は消えたが、上はこれを良しとしない。捏造できる場所は捏造する。
そんなことをわざわざ聞きにきた訳じゃないだろ。何を言いに来たんだ」
「そちらの立ち位置の再確認。そして私からの……いや、IМIからの伝言を」
「ほう」
「我々の知ったことではない。我々は我々のするべきことをする。ただそれだけです」
決意を示した表情と瞳は強く、逸らすことなく岸の顔をずっと見ていた。
「また騒がしくなるぞ」
「慣れています」
「IМIが進入した後のリスクを考えてもか?」
「ええ。我々の目的は黒井沙耶の救出。それを阻むものは全て排除する。何者であろうとも殺してやる」
「成程。そうか」
素敵な宣誓に岸は笑いそうになった。以前、電話先で聞いた殺意を、ようやく目の前で見ることが出来たのだから。
やはりこの女は素晴らしい。是非ともまた、同じ部隊に置いておきたい程に。
アイスコーヒーを飲み終えた岸は立ち上がる。
「《進行不可区域》の境界線を監視している部隊がいる。本日二二〇〇から〇二〇〇は空けさせよう。その間に何とかするんだな」
「いいんですか。そんなことして」
「お節介だと思えばいい。静かにやってくれ」
岸が出ていき、長谷川は椅子の背もたれに体を預けて溜め息を漏らした。アイスコーヒーを飲んでいると携帯電話に着信がきた。相手は如月だった。
「はい」
『欲しがっていたものを手に入れた。今から戻る』
「わかりました」
電話を切ってアイスコーヒーを飲み干す。いったいどこから仕入れてきたのかわからないが、如月が言うなら確実だろう。長谷川は店を出て、IМIに車を走らせた。
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